今日はちょっと長文になりますが、タンザニアのカカオ業界における発酵所(fermentary)という業態の重要性についてご紹介したいと思います。

突然ですが、「カカオ豆生産者」というと何を想像しますか?恐らく多くの方はカカオの木を育てている「カカオ農家」を思い浮かべると思います。藤野良品店はカカオ豆生産者からカカオ豆を仕入れていますが、カカオ農家から仕入れているわけではありません。
??と思われた方も多いと思いますが、藤野良品店の仕入れ先のKokoa Kamili(ココアカミリ)はカカオ豆生産者ですが、農家ではなく、発酵所(fermentary)という事業形態を採っています。
カカオを栽培する契約農家からカカオ豆を買い上げ、発酵、乾燥、選別し、袋詰めして輸出するという事業を行っているのが発酵所です。

カカオ農家が栽培から加工、輸出まで一気通貫でやればいいのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。しかしココアカミリがある地域のカカオ農家の多くは畑の面積が0.5~2エーカー(1エーカー≒0.4ヘクタール=4,000平方メートル)の程度の小規模農家です。農家1軒あたりの収穫量はそれほど多くないため、自前で発酵設備や水分計などのツールを整え、きちんと品質管理をしてカカオ豆を仕上げ、さらには海外のビーントゥーメーカーに輸出する、というのは農家単位ではとても難しいのです。ビーントゥーバーメーカーも通常はカカオ豆の生産者ごとに焙煎の温度や時間、リファイニングやコンチングの時間などのレシピを作りますので、バッチや生産年ごとに品質が大きくばらついたら困ってしまいます。

日本の例で言うと、梅の木を育てて青梅として出荷するのと、青梅を加工して高品質な梅干しや梅酒にして小売店や消費者に販売するのは必要とされるノウハウやスキル、設備が違う、という感じでしょうか。また、限られた人員で色々なことをやると当然ながら力も分散してしまい、本来の栽培がおろそかになってしまう恐れもあります。

ココアカミリが発酵所の事業を行う前は、タンザニア・モロゴロ州のキロンベロ谷地域のカカオ農家は1社しかない大手食品商社のバイヤーの言い値の安い価格でカカオ豆を売るしかなかったそうです。新たに事業を立ち上げたココアカミリはプレミアム付きの価格で農家からカカオ豆を買い上げ、加工するようになりました。2020年は、相場より36%高い価格で農家からカカオ豆を購入したそうです。ココアカミリの発酵所の門の前には農家からの生のカカオ豆の買い入れ価格が掲示されています。

日本では農協という組織が津々浦々にあって、組合員である農家に代わって選別、加工、出荷、営業などを一手に引き受ける仕組みが整っていますが、タンザニアではそういった組織がうまく回っている例は多くありません。組合員からお金を集めて半公共的な設備を作って、組合員が必要とする機能を担う、というのは資金面でも運営面でも結構難易度の高いことなのです。そういった組織を作っても、設備が適切にメンテナンスされなかったり、資金不足になって買い付けができなかったり、果ては代表者がお金を持ち逃げしたりといったことはよく聞きます。ココアカミリが事業を行っているキロンベロ谷地域にも実はカカオ農家の農協組織があるのですが、資金不足などでうまく機能していません。

もしかしたら20年後、30年後にはタンザニアの農家の技術や知識、組織力のレベルが底上げされて、自分たちだけで品質の良いカカオ豆を加工し、輸出できるようになっているかもしれません。そうなればとても素晴らしいことだと思いますが、ココアカミリはキロンベロ谷地域のカカオ豆のサプライチェーンで当面は重要な役割を果たすと思いますし、これからもいい仕事を続けていって欲しいと思っています。

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