藤野良品店では、タンザニアのKokoa Kamiliからカカオ豆を輸入し、日本のBean to Barチョコレートメーカーなどに販売しています。

同じ産地、同じ生産者のカカオ豆であれば、毎回ほぼ同じ品質の豆が届く。

何となく、そんなイメージを持ってしまいがちです。

しかし、カカオ豆は農産物です。実際に長く扱っていると、同じ産地の豆でも、収穫時期やロットによって豆の大きさや状態に違いがあることが分かります。

今回は、2026年3月に輸入したカカオ豆を選別していて気づいた「ロットによる違い」と、その理由を産地に確認して分かったことをご紹介します。

前回のロットより、小さな豆が多い?

2026年3月に入荷したカカオ豆を選別していたところ、前回2025年8月に輸入したロットと比べて、小さな豆が多いことに気づきました。

藤野良品店では、小口のお客様へ出荷する前にカカオ豆を選別しています。

選別の際には、極端に小さい豆、薄く平たい豆、2粒や3粒がくっついた豆、割れた豆、皮が大きくむけた豆などを取り除いています。

選別については、以前の記事でも詳しく紹介しています。

「カカオ豆の選別作業に『ふるい』を導入してみた」

普段は、選別によって取り除いた豆の重量まで細かく記録しているわけではありません。

ただ、今回は明らかに多いと感じたため、試しに重量を測ってみました。

最初の30kg袋では、取り除いた豆が3,317g。

次の30kg袋では、2,590gでした。

30kgに対する割合にすると、それぞれ約11.1%、約8.6%です。

2袋平均では約9.8%。

つまり、藤野良品店の選別基準では、重量ベースで約1割を取り除く結果になりました。

これは普段(だいたい5%程度)よりかなり高い数字でした。

「約10%が不良豆」という意味ではありません

ここで一つ注意が必要です。

この数字は、「届いたカカオ豆の約10%が不良品だった」という意味ではありません。

産地側が輸出可能と判断するカカオ豆の基準と、藤野良品店の選別基準は、必ずしも同じではないからです。

例えば、小さな豆であっても、カカオ豆として問題なく使用できるものはあります。

一方で、焙煎する側から見ると、大きさが大きく異なる豆を一緒に焙煎すると、火の入り方にばらつきが出る可能性があります。

そのため、藤野良品店では産地側の基準よりも厳しく選別している部分があります。

「品質が良い・悪い」という二者択一ではなく、どのような用途で使うかによって求められる品質基準が違う、ということだと思います。

産地に聞いて分かった「収穫時期」の影響

今回のロットについて、Kokoa Kamiliに「前回より小さな豆が多いように感じる」と伝え、理由を聞いてみました。

すると、現地スタッフから興味深い説明がありました。

Kokoa Kamiliでは、6月頃から11月頃までの豆は比較的大きく状態がよい一方、12月、1月、2月とシーズンの終盤に近づくにつれて、豆が小さくなる傾向があるとのことでした。

12月から1月頃についても現地でできる限り選別しているものの、収穫時期の特性上、小粒の豆が増えやすいそうです。

私自身、この説明を聞いて納得するところがありました。

前回輸入したのは8月。

今回のロットは、それとは異なる時期に収穫・加工された豆です。

同じKokoa Kamiliのカカオ豆でも、収穫時期によって豆の大きさが変わるのであれば、ロットによる違いがあるのは自然なことです。

農産物だからこそ「いつ買うか」も品質の一部

これまでカカオ豆の品質というと、発酵や乾燥、選別などの工程に目が向きがちでした。

しかし今回の経験から、もう一つ重要なのが「収穫時期」だと気づきました。

もちろん、6月から11月の豆なら必ず良く、12月以降なら悪い、という単純な話ではありません。

その年の天候や収穫状況によっても変わります。

ただ、同じ産地のカカオ豆でも季節によって特徴が変わることを知っていれば、輸入する側も発注時期を考えることができます。

特に一定の豆サイズや焙煎の均一性を重視する場合には、価格や風味だけではなく、いつ収穫された豆なのかという点も、仕入れを考えるうえで重要なのかもしれません。

選別を厳しくすれば、それで解決するわけではない

では、産地側に「もっと厳しく選別してください」とお願いすれば解決するのでしょうか。

話はそれほど単純ではありません。

選別基準を厳しくすれば、当然ながら輸出用として販売できるカカオ豆の量は減ります(より安価に地元市場に売るルートはありますが)。

販売量が減れば、生産者や加工者の収入にも影響します。

買い手側がより厳しい品質を求めるのであれば、そのために必要となる追加の選別作業や、販売できなくなる豆の分を価格に反映することも考える必要があります。

安い価格を求めながら、品質基準だけをどんどん厳しくしていくことは持続的ではありません。

買い手と売り手の双方にとって無理のない方法を探すことが大切だと思います。

現場でできる小さな改善も

藤野良品店では以前から、Kokoa Kamiliの選別工程に日本の「ふるい」を使えないか試してきました。

小さな豆や割れた豆の一部を、手で一粒ずつ取り除く前にふるいで分けることで、選別作業を効率化できる可能性があります。

現地でカカオ豆の選別を担当している女性たちにも試してもらったところ、作業がしやすいという評価もあったそうです。

最近ではKokoa Kamili側から、さらにふるいを導入したいという話も出ています。

今後、新しい工場の立ち上げも予定されているとのことで、生産量が増えていけば、品質を一定に保ちながら効率よく選別する仕組みは、これまで以上に重要になると思います。

ふるいについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

産地とやり取りすることで分かること

今回、「前回のロットと少し違う」と感じたことを産地側に伝えたことで、収穫時期と豆サイズの関係を知ることができました。

もし何も聞かなければ、単に「今回は小さい豆が多かった」で終わっていたと思います。

カカオ豆は天然の農産物です。

毎回まったく同じものを作ることはできません。

だからこそ、ロットごとの違いを観察し、気づいたことを産地側と共有しながら、その理由を理解していくことが重要だと感じています。

品質について何か問題があったときに、単に生産者側へ改善を求めるのではなく、

なぜ違いが生じたのか。

買い手側の基準と産地側の基準にどのような違いがあるのか。

現場の作業を無理なく改善する方法はないか。

そういったことを一緒に考えていく。

藤野良品店は小さな輸入者ですが、産地と直接やり取りできる立場だからこそ、こうしたコミュニケーションを大切にしながら、より良いカカオ豆を日本のお客様に届けていきたいと思います。